CTO の成田です。星による記事、 在宅勤務環境の継続的改善 でもご紹介した通り、クックパッドでは国内外のグループ全体で在宅勤務に切り替えており、同時に勤務環境づくりに取り組んでいます。
先の記事では、椅子・机などのファシリティレンタルや、IT システムの整備、コミュニケーションの改善など、様々な取り組みをご紹介しました。本稿では、このような取り組みの一環として開催した、在宅勤務環境改善の社内ハッカソン「Hackarade Remote」についてご紹介します。
テーマは「私の Work From Home の課題解決」
社員同士のコミュニケーションの問題や、家庭環境の問題など、長期の在宅勤務には様々な課題があることはご存じかと思います。今回のハッカソンでは「在宅勤務で困っているかもしれない誰か」を想像で助けるのではなく、「自分が困っていること」を自分で解決するということに主眼を置いてテーマを設定しました。多くの人が助かるような最大公約数的な課題解決はすでに会社として取り組んでいるため、ここではそういった全体施策ではキャッチアップできないような粒度の課題を自分で見つけて自分で解決するというのが狙いでした。
作品例
まずは受賞作品の 3 作をご紹介します。
リモートユーザーインタビュー便利くん
@hiragram による作品です。こちらは CTO 賞を受賞しました。
クックパッドではサービス開発の際にユーザーインタビューを多用するのですが、いまはこれまでのような対面でのインタビューを実施できなくなっています。そのためユーザーさんと Zoom でやりとりをしながら開発中のプロトタイプを触ってもらうのですが、現時点の Zoom の iOS アプリでは、たとえばクックパッドアプリの画面を共有してもらいながらユーザーさんの表情も見る、ということができません。そのため、アプリを使ってもらった際のユーザーさんの反応を感じ取りにくいという課題がありました。
そこで開発された「リモートユーザーインタビュー便利くん」は、iOS クックパッドアプリの開発版において、アプリの操作画面とカメラ映像を iOS 版 Zoom アプリを使って配信できる機能を追加したものです。内部的には、Zoom アプリの ReplayKit を利用しているそうです。
また @hokaccha からは、「リモートユーザーインタビュー便利くん for Web」という Web 版の実装が投稿されました。
Workcloud と Slack を連携するやつ
@takonomura の作品です。こちらはスタッフの投票で決める投票賞で 1 位を獲得しました。
在宅勤務では、どうしても勤務時間の記録が煩雑になりがちです。クックパッドでは大多数の社員がフレックスタイム制で働いていて、 Workcloud (勤怠システム)を利用した打刻を行っており、勤務開始時や退勤時に Slack でチームメンバーに共有する文化があります。 この作品は Workcloud での打刻時に Slack に出退勤のメッセージを自動で投稿してくれたり、Slack で出退勤に関する発言をしたときに、打刻忘れを検知して Slack で通知してくれます。
ハッカソンの後日談としては、この作品とは別に、Workcloud の API を経由して勤怠を記録できる Slack bot が社内で開発されたため、Slack での発言をトリガーにして出勤/退勤の打刻ができるようになりました。
みんなが買ったもの
こちらは @hogelog の作品。在宅勤務の不便を解消するためにみんながいろいろなものを購入していると思います。この作品はこれまで Amazon で買ってきたものを購入履歴から投稿することで、みんなが買っている便利なものを知ることができるサービス。この作品は人事本部長賞を受賞しました。
他の応募作品の例
上記の受賞作以外にも個性的な作品が多く出てきたので、ここではその一部をスクリーンショットとともに紹介します。
開催を振り返って
今回のハッカソンを振り返って、いくつか気付いた点を書きます。
見落としていた困りごとはまだまだ沢山ある
椅子や机がない、インターネット回線がない、などの、わかりやすく緊急度の高い課題は会社として取り組んできました。しかし今回のハッカソンで出てきた作品には、その作品を見て初めて「確かに私もそれ困ってた」と認識できるものが沢山ありました。在宅勤務において、まだ自分で認識してすらいない困りごとはまだ無数に残っているように思います。
在宅勤務においてまとまった時間を確保するのが難しかった
物理出社をしていたころは、エンジニア全員の予定を一日ブロックして、一日がかりのハッカソンイベントを行うというのはそれほど難しくありませんでした。しかし在宅勤務では、特に家族と暮らしている方はプライベートの時間と仕事の時間が入り乱れながら働いていたりするので、全員同時に丸一日拘束したイベントというのはこれまでより難易度が高いように思います。そのため、今回は提出締め切りまで 1 週間ほどの猶予を設け、その 1 週間のなかで「8 時間まで開発に使ってよい」というルールにしました。
チーム参加より個人参加のほうが動きやすかった
今回はチーム参加も可としていたので、チームを組もうとする人達は何組かありましたが、結果として全ての参加者が個人として参加しました。在宅勤務ではチームメンバーと同期を取りながら短時間で成果を出すのは難しい、というのは、普段の業務でも見られる傾向です。
全社イベントの価値を見直した
今回のハッカソンをやってみて、部署を超えて同じことに取り組む、同じ話題を持つ、同じ事で盛り上がる、ということはいまの状況下においては重要な意味を持つと改めて実感しました。在宅勤務では、仕事上直接繋がりのない人とは、視界にも入らず本当に疎遠になってしまいます。
おわりに
全員が在宅勤務に切り替えたときに、これまでと同じパフォーマンスが同じように発揮できると私は考えていません。しかし、在宅勤務環境はこうすれば全員普通に働ける! というような、全員に当てはまるようなベストプラクティスは存在しません。家庭環境の違いやオンラインコミュニケーションの得意さなど、在宅勤務の課題は人それぞれ違いがあるためです。 クックパッドは幸いにしてもともとグローバル展開によって複数の国に拠点があり、世界中どこにいても仕事ができるように情報システム環境を作ってきました。とはいえ全員が在宅勤務という状況は私たちにとっても初めて経験することです。 在宅勤務期間の長期化において鍵となるのは、私はひとり一人のサバイバル能力だと考えています。つまり、自分に合った働き方・休み方・作業環境・自己管理方法などを自分の力で見つけ出し、実行していく能力です。自宅の中で何が起こっているのかは会社やマネージャーは知ることができませんし、ひとり一人サポートしてあげられることは限られているからです。今回のハッカソンは、そういった自分で自分の課題を見つけて解決することの重要さを思い出すきっかけにできたと感じています。