人工知能学会のトップカンファレンス派遣レポータとして NIPS2017 に参加しました

研究開発部の菊田(@yohei_kikuta)です。機械学習を活用した新規サービスの研究開発(主として画像分析系)に取り組んでいます。 最近読んだ論文で面白かったものを3つ挙げろと言われたら以下を挙げます。

人工知能学会の トップカンファレンス派遣レポータ という制度で NIPS2017 に参加しました。 学会への参加に加えて、その後の論文読み会や報告会での発表など様々な活動をしましたので、一連の活動を紹介したいと思います。

NIPS2017 の特徴的な写真として invited talk の一コマを貼っておきます。驚くほど人が多い...

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また、参加して自分が面白いと思った内容(deep learning のいくつかのトピック)をまとめた資料も最初に紹介しておきます。

経緯

昨年 トップカンファレンス派遣レポータ という制度がアナウンスされ、新しい取り組みで面白そうな企画でもあるので応募しました。 学会に参加するだけなら応募せずに会社で申請して参加すればいいのですが、NIPS の内容に興味を持つ人が集まりそうな場での発表の機会が得られるということが主たるモチベーションでした。

レポータとして選ばれるのは3名で応募者の統計情報などは明らかにされていません。 3名の内訳は、大学の先生・大学院生・私、という感じでバランスも考慮されている印象を受けました。

応募自体はA4の資料を一枚程度作成すればよいもので(郵送ですが)、それで必要経費を全て出してくれるというなかなか太っ腹な制度だと思います。 今年も同様の内容で募集する可能性が高そうなので、興味がある方は申し込んでみるのもよいと思います。 昨年は5月上旬に人工知能学会のメーリングリストから応募者を募るメールを受け取りました。

NIPS2017

Neural Information Processing Systems (NIPS) は機械学習の主要な国際会議の一つで、私は2015年にも参加していて二回目の参加となりました。

昨今の機械学習ブームを牽引する学会でもあり、2017年は registration が8000人でそれもかなり早い段階で打ち切られたという状態でした。 投稿論文数も3240件(採択率21%)で2016年から30%程度増加しており、年々その熱量が増しています。 企業のスポンサーは84社にも上り、diamond sponsor に関しては展示会さながらの大々的な展示が繰り広げられていました。

論文採択に関しては面白いデータが紹介されていて、事前に arXiv にも submit されていた論文は43%に上り、レビュワーがそれを見た場合の採択率が35%という高い数字であったというものです。 レビュワーが見てない場合も25%と高い水準のため、そもそも質が高めの論文が arXiv に submit されるという傾向はあるかもしれませんが(例えば地力のある研究室がそういう戦略を取っているなど)、arXiv が機械学習分野にも高い影響力を発揮していることが伺えます。 学会では査読されてから publish されるまで時間も掛かるので、論文は arXiv などですぐに共有されて open review などで評価する open science 化が進んでいくかもしれません。

内容に関しては、NIPS において長らく主題の一つである algorithm が最多でありながら、deep learning や meta learning などの勢いが著しく、それ以外にも fairness や interpretability のような分野の台頭が目立つという、様々な側面で盛んに研究が進められているという印象でした。 個々の詳細な内容の説明はここでは省きますが、deep learning 関連のまとめに関しては冒頭の紹介資料にも記載しています。

NIPS2017 では新たな取組として competition track や DeepArt contest が開催されていました。 前者は kaggle のようなコンペを事前に開催して当日に上位入賞者に解説をしてもらうというような形式で、後者は style transfer を使って画像を artistic に変換して投票で入賞者を決めるという形式でした。 学会にこれらの要素が必要なのかということは議論の余地があるかもしれませんが、学会も世の中の動向に合わせて変化を続けていることが伺えるものでした。

その他にはネットでも話題になった苛烈な人材獲得競争のような話題がありますが、参加者としてはそこまで騒ぎ立てるほどではないと感じました。 一部でバブルを感じさせるイベントがあったりしたことは事実ですが、学会の性質を歪めるほどのものではないように思います。 学生としても自分が興味のある企業に直接アプローチする機会が増えて良いのではないでしょうか。

NIPS2017 論文読み会

せっかく参加したので、興味を持った論文をもう少し深く読んで発表しようと思い クックパッドで論文読み会を主催 しました。 読み会の様子です。

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私は GAN の学習の収束性に関するいくつかの論文を読んで発表をしました。

本来はどこかで開催される読み会に参加して発表だけしようと思っていたのですが、観測範囲内で望ましいイベントが開催されなかったので主催するに至りました(その後いくつか同様のイベントが開催されました)。

イベントの主催は大変なところもあるのですが、機械学習に興味のある方々に参加していただき盛況でした。 こういったイベントを通してクックパッドに興味を持って頂ける場合も少なくないので、主催してみて良かったなと思います。

今後もこのようなイベントを開催していくことになると思いますので、興味のある方は是非ご参加下さい。

NIPS2017 報告会

派遣レポータの仕事として事前に開催が決まっていた 報告会 でも発表しました。 20180221に大阪大学中之島センターで、20180228に早稲田大学西早稲田キャンパスで報告会が開催されました。

有料イベントにも関わらず満員御礼状態で、特に企業の方々の参加者が多かったと伺っています。 久しぶりの大学での発表だし、NIPS の報告でもあるので、内容は思いっきり deep learning の理論的な話をしました。 参加者の目的と合致していたかは一抹の不安が残りますが、自分が聴衆として聞くなら悪くない内容だったと思っています(自分が話してるので当然ですね)。

その他

人工知能学会紙に参加報告を載せる予定です。 また、それ以外にも付随して何かやるかもしれません。

まとめ

人工知能学会のトップカンファレンス派遣レポータとして NIPS2017 に参加した話と、それに関連するイベントで何をやったのかという紹介をしました。 NIPS は理論的な色合いが濃い学会ではありますが、次々と新しいものが出てくる機械学習界隈ではこういった内容をキャッチアップしていくのは事業会社の研究開発でも重要だと考えていて、そして何より自分が好きなので、参加して得られた知見を今後の業務に活かしていきたいと思います。

いかがでしたでしょうか。 クックパッドでは、機械学習を用いて新たなサービスを創り出していける方を募集しています。 興味のある方はぜひ話を聞きに遊びに来て下さい。 クックパッド株式会社 研究開発部 採用情報