サービス開発でぶつかってきた壁と、そのとき助けてくれた本

こんにちは、開発ディレクターの五味です。クックパッドにレシピを投稿してくれるユーザーのための機能やサービスを開発する「投稿開発部」に在籍しております。

投稿開発部は、2018年1月に前身となる部からメンバーを一新して発足した部署です。自分たちで1から戦略を作るため、強い実感を持ってユーザーを理解することを信条に、資料を読んだり前任者に聞いたりするだけではなく、実際にユーザーとたくさん話し、たくさんレシピを投稿し、ユーザーのことをたくさん考えてきました。

この記事では、その中でぶつかった課題を解決するために取り入れた書籍や、それをうまく業務に取り入れるために行っている工夫を紹介します。

サービス開発にはさまざまな壁が現れる

ユーザーと事業目標に真摯に向き合うほど、サービス開発にはたくさんの壁が現れます。私たちも例外ではなく、部の発足以降、以下のような壁に激突してきました。

  1. 「ユーザー課題の見極め難しい!」の壁
  2. 「戦略づくり難しい!」の壁
  3. 「良いソリューションアイデアが出ない!」の壁

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開発の歩みとぶつかった壁の所在

壁にぶつかったら学習チャンス

投稿開発部には、日常的に書籍を読んで、仕事に取り入れようとする文化があります。特に壁にぶつかった時は、ブレイクスルーを図るため、チームで意識的に本を読んだりします。

この1年半で、激突した壁ごとにお世話になった本をご紹介します。

1. 「ユーザー課題の見極め難しい!」の壁

部の発足後、早々に苦悩したのが「レシピ投稿ユーザーの本質的な課題は何か」という問いでした。

クックパッドには、レシピを検索するユーザーと投稿するユーザーがいますが、それぞれ数や志向が大きく異なります。投稿ユーザーのための開発をするなら、彼らのことを誰よりもわかっているべきです。「投稿ユーザーはなぜレシピを投稿してくれるのか?」という命題に、自分たちが心底信じられる答えを得たい、でもどうすれば良いのだろう...というのが最初の壁でした。

そしてその時は、以下の本からとっかかりを得ました。

「ジョブ理論」

https://www.amazon.co.jp/dp/B0746JCN8B/

人が何かプロダクトを使う時、必ずその人は何らかの解決したい「ジョブ」を持っており、その解決のためにプロダクトを「雇用」している、という見地に立って、顧客の「ジョブの解決」に寄り添うプロダクト開発を論じた本。「ジョブ」はいわゆる「課題」や「インサイト」と似た意味だが、顧客の置かれている「状況」により注目し、特定状況下で発生する実用的な欲求に目を向けている。

どう活用したか?

  • ユーザーにレシピ投稿を雇用させている「ジョブ」は何なのか、読み解くことにしました
  • 具体的には、さまざまなレシピ投稿者を呼んで根掘り葉掘り話を聞き出し、あとから彼らの「ジョブ」を推察するインタビューを実施しました

やってみてどうだったか?

ユーザーの抱える「ジョブ」の解決をサービス発想の起点にすることは本質的だと感じます。これだ!という「ジョブ」を発見できると強いコンセプトが作れる、という実感が、取り組むうちに芽生えてきました。

ただし「ジョブ」は、ユーザーの発言内容だけでなく、発話時の表情やその人の価値観、普段の生活の様子など、さまざまな情報を複合的に組み合わせて考えないと推測できないので、慣れるまでは考えるのが難しいです。私たちは、インタビュー後に観察した情報を参加者全員でぶちまけ、それを見ながら「このユーザーのジョブは何だったか」を議論して定義する手法で乗り切りました。インタビューの内容は、本に出てくる、ユーザーの発話からキーワードを捉えて深堀りしていく様子を参考にし構成しています。

また、「ジョブ」の定義を何度か重ねていくと、「ジョブ」の粒度をどのくらいに設定するかが難しいことに気づくと思います。その際は本で紹介される事例を引き合いに出しながら、”定義した「ジョブ」を解決している競合サービスを思いつくか”という基準で調整するのがおすすめです。

なお今では施策設計の際、誰のどんな「ジョブ」をターゲットにするのか定義することが必須になるほど、「ジョブ理論」は深く活用されています。最近はインタビューの結果を人物ごとに「ジョブ」起点で記事のようにまとめた「ユーザー白書」を作成・蓄積するなど、実践手法も進化させながら続けています。

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インタビュー後、「ジョブ」を見つけようとしている議論の様子

2. 「戦略づくり難しい!」の壁

向き合うユーザーのことがわかってきたところで、次は、事業目標をどう達成するか、戦略立案の壁にぶつかりました。投稿開発部の事業戦略は、部長が部の発足前に作った草案を、適時メンバーを巻き込みながら見直し、アップデートしています。目標がかなり動かし難い数字であることに加え、自分たちの学びも日々進化していく状況であるためです。

ただ当時は、事業戦略を考えたことのないメンバーが大半だったので、議論に入っても、意見すらうまく出ない状態でした。そこで、部長主導で以下の書籍を取り入れました。

「ストーリーとしての競争戦略」

https://www.amazon.co.jp/dp/4492532706/

競争戦略(事業戦略)は、静止画でなく動画、ストーリーであり、良い戦略は人に思わず話したくなる面白いストーリーになるはずだ、という見地に立って、他社が追従しようと思えないほど優れた戦略を作るための考え方を説いた本。講義を受けているような文調で、文量も多いが、事業戦略立案の本質を捉えて論じている良著。実在企業の事例も多く紹介されて参考しやすく、チームでの議論の際の引き合いに出しやすい(ただしITの事例は少ない)。

どう活用したか?

  • レシピ投稿サービスのコンセプト=「本当のところ我々は誰に何を売っているのか?」を定義し直すことから始め、自分たちの戦略ストーリー図を作りました
  • その上で、本で紹介されている他社の戦略図と見比べながら、自分たちの戦略図を磨いていきました

やってみてどうだったか?

自分たちのサービスが「本当のところ誰に何を売っているのか?」を定義するのは、想像以上に難しいです!これまでのインタビューで得たユーザーのエピソードをかき集めたり、競合サービスのコンセプトを推測して自社と比較したり、腹落ちする定義に至るまでに少し時間がかかりました。

しかし、そこで定義した提供価値を軸に、ゴール達成を引き起こすまでの中長期のストーリーを描いて作った戦略図は、シンプルで筋が通っていて、戦術や計画を考えるのに使いやすいです。現場でも、単発のアイデアをやみくもに実行することがなくなり、複数の要素を因果関係を持たせながら実現していく計画を考えられるようになりました。

ただし、実際に戦略図を書き起こすのは至難です。筋の良い戦略ストーリー図は、そらで描けるほどシンプルで、且つ、目標達成のために必要な変化を含む...とのことですが、ここは本に紹介されている実在企業の戦略図を横目に見ながら頭を捻りまくるしかありません。戦略図をチームで議論して描くのは難しすぎるので、今はコンセプトと解決策をチームで議論し、ある程度骨子が見えたところで部長が戦略図の草案を書くことが多いです。チームでは、その草案を元に、ストーリーを確実に実現する方法や、より強い「非合理」を入れてストーリーを面白くする方法を考えることにしています。

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何度もお手本にしている、スターバックスの戦略ストーリー図

3. 「良いソリューションアイデアが出ない!」の壁

事業戦略ができ、具体的な施策づくりに入って行けるようになると、今度は自分たちの出すソリューションアイデアが今ひとつに思えて悩むようになってきました。戦略と仮説には自信があるのに、思いつく解決策に新しさや捻りがない、そもそも出てくるアイデアの数が少ない...。この壁は二重構造になっていて、以下2つの問題で成り立っていました。

  • ①チームでのアイデア出しの進め方がわからない
  • ②出すアイデアの量・質に自信が持てない

それぞれを助けてくれた本は以下です。

① 「SPRINT 最速仕事術―あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法」

https://www.amazon.co.jp/dp/B06Y5NW5PQ/

問題①に効いた本。Googleで開発されたという、5日間で新しいアイデアを形にして検証・評価まで完了させる「スプリント」というフレームワークを紹介し、その実践手順を詳しく解説している。

どう活用したか?

  • 施策検証の段階にある施策で何度かそのまま取り入れて、スプリントを実施しました
  • その後、一部の手法を部分的に切り出して、普段の会議に取り入れるようにしました

やってみてどうだった?

スプリント自体は一長一短あると感じます。良いところは、テーマに対して参加者全員で大量のインプットを得て、めちゃくちゃ集中して考えることです。メンバーの脳内同期やステークホルダーの巻き込みにも効いたりします。また、とにかく時間が制限されるので、煮え切らないアイデアを捨てる判断ができる点も良いです。デメリットは、参加者全員の5日間の時間拘束が辛いことと、得られる成果の質が参加者の能力に左右されること。また、「レシピ投稿」はもともと施策の効きに時間がかかる傾向があるのですが、それを1日のインタビューで評価して良いのか?という疑念が拭いきれないことも、私たちにとっては大きな気がかりです。

ただ、「有能な人の仕事の流れをフレームワーク化した」と言うだけあって、スプリントのフレームワークには、目的に対する情報インプット、アイデア出し、検証、評価を効率的に行う工夫が詰まっていると感じます。それらを切り出して普段の業務に取り入れても、アイデアを考えたり意思決定するのがラクになり、チームのアイデア出しのパフォーマンスが高まります。専門家インタビュー、光速デモ、クレイジー8、ストーリーボード、ヒートマップ、サイレント投票などの手法は、普段の会議でも単発で取り入れやすいのでおすすめです。

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スプリントの手法を活用したアイデア出しの様子

② 「直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN」

https://www.amazon.co.jp/dp/B07NMN1B5Z/

問題②に効いた本。世の中を動かしてきたのは、ロジカルに組み上げられたアイデアではなく、「自分駆動の妄想」を起点にしたビジョンだ、という前提の元、まず根拠のない妄想(ビジョン)があって、それを実現する筋道を作るために論理を組み立てる「ビジョン思考」を提唱している。「ビジョン思考」の強化方法や、それに則ったアイデア作りの方法も詳しく解説されている。

どう活用したか?

  • チームで、既存路線上にない新しいアイデアを出さなければいけない時に、本で紹介されている「組替」の手法を取り入れました
    • 変化を起こしたい事象の「当たり前」を洗い出し、違和感のある「当たり前」をひっくり返してから、それを元に新しいアイデアを生み出していく手法です
  • 併せて、チームメンバーと「プロトタイピング志向」を徹底する同盟を組んでいます
    • 生煮えの考えもissue化したり、粗いプロトタイプを作って早期に人に見せることでアイデアに客観的な視点を加え、そこから練り上げていくところに時間をかけます

やってみてどうだったか?

「組替」の手法は取り入れ始めて日が浅いですが、以前より新しさを含んだアイデアがたくさん出るようになったと感じます。フレームワークに則って頭と手を動かせば、「ひらめき」=”既存要素の組み替え”を意図的に起こせるよう考えられており、チームで一緒に実践しやすいのも良い点です。

「プロトタイピング志向」は、普段のディレクター業務で実践するのにはまだ慣れないですが、うまくできた時は、1人で考え込むことに時間を使ってしまった時よりも成果物の質は高まると感じます。ちなみにこのブログ記事も、構想段階から色んな人に相談し、レビューしてもらって仕上げました!

また個人的にはこの本によって、「仕事のアイデアは論理で組み上げなければならない」という思い込みを打破できたことは大きかったです。まず直感に目を向け、それを人に説明できるよう後から論理づけして磨いていくという思考を意識すると、出せるアイデアの質が変わってくるのを感じます。

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「組替」の手法を使ったアイデア出しの様子

本の知識をチームに取り入れるために

せっかく読んだ本から知識を”モノにする”には、読了後すみやかに得た知識を業務で実践することが1番重要だと感じます。また、チームで仕事を進める中では、”共通言語を作る”という意味でも、書籍で得た知識の共有は有効です。特にチームが悩んでいる時や、抽象度の高い議論を進めなければならない時、うまい共通言語を得ると、停滞していた話が進み始めることが多々あります。

新しい知見を業務で実践するところまで漕ぎつけたり、自分の読んでいる本の知識をうまくチームに共有できるかは、読んだ人の裁量によりがちです。そのため、本の知識をチームや業務に取り入れやすくするために、以下のような工夫をしています。

1.読んでいる本を共有しやすくする工夫

読書感想文共有スレ

GHEの部署のリポジトリ配下に「サービス開発系の読んだ本の感想を書くスレ」というissueを常設。簡素な1行コメントから超長文レポートまで、メンバーが読書感想を自由にpostしています。熱量の高い感想文には自然と注目が集まるし、共有したい知識はそこにまとめておけば参照してもらえるので、その後の議論でも話題に出しやすくなるのが利点です。最近このissueはコンテンツ力が増してきて、他部署からもファンや投稿者を創出する人気スレ(?)になりつつあります。

定例や1on1で読んでいる本の話をする

定例ミーティングや部長との1on1で、いま読んでいる本をよく共有しあいます。同じ本でも人によって読み取り方が異なるので、話すことで新しい観点が得られたり、チームの誰かと「それいいね!」「あの施策で試せるじゃん!」という会話をしておけると、そのあとの情報発信や業務での実践提案がしやすくなるので、意図的に活用しています。

その他、読んで良かった本は、物理本を買ってデスクに置いておくのも一手です。興味を持ってくれた人にサッと貸し出して、味方を増やします。

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2.本の知識を業務で実践しやすくする工夫

わかりやすい事例や概念を切り出しておく

目的の書籍を読んでいない人を巻き込みたい時に使います。何も知らない相手に、自分が本から得た知識を口頭で説明してわかってもらう(その上で同じレベルで議論に参加してもらう)ことは至難の技ですが、本の中からわかりやすい事例や、概念を端的に表した図解などを切り出しておいて「うちもこんな風にやってみませんか」と提案すると、やりたいことをわかってもらいやすくなります。

読書後、自分の業務で実践するtodoを出す

「本を読んでも自分の仕事にどう活かせるか、パッとわからない...」という人(=私)におすすめの手法です。本を1冊読んだら、そこから自分の仕事で試してみたいtodoを1〜3個だけ考え出します。それだけで実践に運べる確率が上がります。「前のtodoが終わるまで次の本を読めない」というルールをつけると、より強制力が働くのでおすすめです。あとは実際にやってみて、継続するか・やめるかを振り返る機会を作れば完璧です。

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おわりに

今回は特に大きかった壁と、ヘビロテしている選りすぐりの本を紹介しましたが、チームでお世話になってる本は他にもまだまだたくさんあります。仕事に行き詰まった時は、視野を広げて新しい知識を取り入れるチャンスと捉え、これからも積極的に本を読んでいきたいところです。

なお現在は、よりインプットの幅を広げたく、書籍に加えて、似た課題に直面している方々との情報交換も積極的に行っていきたい所存です!もしご興味を持ってくださる方がいらっしゃいましたら、お気軽にご連絡ください。
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そしてそして、こんな私たちと一緒に壁に激突して、一緒に成長してくれる仲間も募集中です!募集中の職種は採用サイトからご確認ください!
https://info.cookpad.com/careers/

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