デザイナー横断組織の変遷

こんにちは。デザイナーの池田(id:tikeda)です。6月末までユーザーファースト推進室というデザイナーを中心としたユーザー体験について横断的に責任をもっている室の室長を勤めていました。7月からこのユーザーファースト推進室をなくし役割を各部室に分散させる体制変更を行いました。 ユーザーファースト推進室については、過去のインタビューブログのエントリーをご覧ください。

はじめに

サービス開発では、デザイナー・エンジニアといった職種毎に部を構成し各プロジェクトに派遣するようなスタイル(A)、ディレクター・デザイナー・エンジニアといった役割の異なる職種で部を構成するスタイル(B)、またこの2つを組み合わせたハイブリットのような組織が存在しており、弊社だけでなく開発の現場ではよりよい開発が行われるよう試行錯誤が行われていると感じています。

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クックパッドではここ数年、アプリケーションエンジニアは各事業に所属していましたが、デザイナーのほとんどはユーザーファースト推進室に所属しプロジェクトやサービス毎にジョインするスタイルをとっていました。 本エントリーは私がこのユーザーファースト推進室を通して得た主にデザイナー組織についての知見を書きたいと思います。

2013年 : デザイナーをひとつの組織に

属人性をなくし、みんなでサービスを作れるように

まず、ユーザーファースト推進室は、社内で新規事業が立ち上がっていく過程で、デザインやユーザー体験がバラバラにならず統一感をもつこと、デザイナーがいない事業でも早いスピードでサービスを立ち上げられることなどを目的として、まずデザイン部という形で立ち上がり、のちにユーザーファースト推進室となりました。

それまで、デザイナーは各部門に所属していましたが、人数不足により、デザイナーが関わっていないプロジェクトや、あるプロジェクトのデザイナーが他のプロジェクトに頼まれてデザインしているといった事が自由に起こっていて俗人化していました。これを束ねて担当をつけることにより、リソースの分配や優先順位付けていき開発に取り組めるようになったと感じています。

ひとつの組織に集めてよかったこと

1 : デザイナー人数以上の力を発揮

1つに束ねたことで、デザインのガイドライン、フレームワーク化が促進され仕組みが整い効率化されました。そして、個々のデザイナーにとっても視野が広がることでこれまで幅広い仕事の領域にトライでき成長にもつながったと思っています。コーディングが得意な人、イラストが得意な人、UI が得意な人、ディレクションできる人がコミュニケーションを高め、教えあう環境を自然に作り個々の経験を高めるということです。結果、苦手なところを補いあってトータルの完成度も高められたのではないかと感じています。

そんな過程で、それぞれがお互いの仕事に意見を言い合える、360度でレビューの仕組みなどが生まれました。全体の見通しをよくするとともに、自信がない場合でも得意な人に聞け角度を高める文化となっています。

360度レビューの事例
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2 : デザイナー以外スタッフのデザイン意識の高まり

横断的組織になることで、開発にとどまらず会社全体での接点も増えたと感じます。その結果、デザイナー以外のスタッフがデザインへの感度が高まったとも感じています。 コーポレイトロゴ、年賀状、広告のクリエイティブ確認など範囲は広がりましたが、コンペ形式をとり社内の参加を促すこともこの感度を高める一つの事例です。

コンペの告知事例
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そのために相談しやすいインターフェイスを作るというのも意識していたひとつです。チャットでもメールでも、廊下ですれ違ったときでも相談方法は柔軟にしつつ、それをチームに持ち帰り整理し優先順位をつけていくことに労力を割くことが社内に浸透していく秘訣とも言えます。相談しにくい環境を作り品質管理を怠るよりも、小さいものでも受け入れ、クオリティをあげるチャンスをつかむ方が大切です。もちろん、それを継続させていくためには、それに答えるクオリティが外せないためデザイナーにもプレッシャーになります。

3 : 特定事業だけなく、全体を意識しデザインできるように

各プロジェクトにユーザーファースト推進室のメンバーが加わっていることで、事業部長などの縦串のプロジェクト責任者だけでなく、ユーザーファースト推進室としての横串の責任が生まれてきます。デザイナーは他のチームメンバーと共に事業成功に貢献するのが大切でありますが、エンジニアがエンジニアリング面での仕様や設計の責任を持つのと同様に、デザインに関してもデザイナーが責任を持つべきだと思っています。そしてそこには、事業サイドだけでなくトータルでのユーザー体験やブランディングの意識が欠かせません。そのため、例えば「この色は以前別のプロジェクトでやっていたここと合わせましょう」「このデザインをこのまま進めるとあっちのユーザー体験を毀損することになりそうです」といったことが主体的に行われるようになったと思っています。

全体を意識した取り組みの事例
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2016年 : デザイナーを各組織に分割

目的を絞り、責任範囲を明確に

横断機能が社内でうまく作用していると感じている側面についていくつか書いてきました。しかし、もちろんうまくいうことばかりではありません。前述した通り、デザイナーは様々なプロジェクトに参加できる一方で、1つのプロジェクトを継続していく力や、1つのユーザー体験に集中して考えることに対して弱さを感じるようになりました。また、プロジェクトにジョインはするもののタイミングにずれがでることでコミュニケーションコストが嵩んだり、「依頼」的な観点が抜けない、依頼者側もユーザー体験についてお任せで頼りがちになるという問題もあります。 今回、ユーザーファースト推進室をなくした理由はこれらの課題の解消。そして、デザイナー同士の距離はこのままに、エンジニアやディレクターとの距離をもっと縮めて同じ責任領域でゴールを目指すことに意識に振り切ることで新しい組織力がつくように思っています。

最後に

以上、ユーザーファースト推進室での経験を元に組織を作る側の目線とデザイナーとしての目線を織り交ぜながら書いてきました。冒頭でも書いたように今回は各事業部に責任を強め、ディレクタ・エンジニアそしてデザイナーが1つの部で仕事をするようにしました。 かといって、これまでやってきた文化やカルチャを失わせる事を目的でやっていることではありません。フェーズにあわせて横と縦のバランスをうまく組み替えていくことでさらによいサービス作りが行えるとおもっています。

開発体制は会社が何を成し遂げたいのかによって左右し、それは規模や事業内容によっても変わると思います。今回のエントリーはクックパッドが会社として変わっていく過程でのデザイン組織の変遷事例として参考にしていただければと思います。

なお、クックパッドではエンジニア・デザイナーを絶賛募集しています。一緒にサービスを作ってくれる人のご応募お待ちしています。