こんにちは投稿開発部の丸山@h13i32maruです。
今日から5日間、本ブログに投稿開発部メンバーで連載記事を書かせていただきます!
いきなり「投稿開発部で連載記事」と言われても何のことかわからないと思うので、まず投稿開発部について簡単に紹介させてもらいます。
投稿開発部は「クックパッドに投稿されるコンテンツ全般」について責任をもっている部署なのですが、中でもレシピ事業の根幹であるレシピ投稿者向けのサービス改善に力を入れています。レシピ投稿者向けのサービス改善は「どうすれば継続的に投稿したくなるのか?」「どうすれば投稿をはじめてみたくなるのか?」の2点に答えを出すことを目標に日々サービス開発に励んでいます。
そこで、本連載では投稿開発部が今年メインで取り組んでいる「クックパッド MYキッチン」という新しいアプリについて5人のメンバーで紹介させていただきます。
1日目(vol1)では「クックパッド MYキッチン」ができるまでの話をちょっとしたストーリー仕立ての文章で紹介させていただきます。普段の記事と比べると技術的なトピックは少なめなので、肩の力を抜いて気軽にお読みください。
そして、2日目以降は以下のような内容を予定しております。
- vol2: React Native アプリの開発基盤構築 by @morishin127
- vol3: ReactNativeプロジェクトのAndroid環境を整備する by @101kaz
- vol4: 「クックパッド MYキッチン」のアプリアイコンができるまで by @sn_taiga
- vol5: 料理をつくる人はどんな課題を抱えているのか? 〜ユーザーの課題を施策につなげるインタビューの取り組み〜 by 五味 夏季
「クックパッド MYキッチン」とは
今年、投稿開発部では「クックパッド MYキッチン」というアプリ(以下MYキッチンアプリ)の開発に注力しています。このアプリはレシピ投稿者が使いたいと思えるアプリを目指して、これまでのクックパッドアプリ上での体験をリデザインして作られているものです。
ではなぜ既存のアプリ上でレシピ投稿者向けの体験をリデザインしなかったかというと、「開発・検証のスピードを上げるため」というのが大きな理由です。そのために「関わる人を少なくして、意思決定を速く」と「機能の制約を受け入れて、実装を速く」ということを行っています。
特に後者の「機能の制約を受け入れて、実装を速く」について、MYキッチンアプリではReact Nativeを採用してフルスクラッチで作られています。また、CodePushについても試し始めています。
ではここから、いかにしてMYキッチンアプリが出来上がっていったのかを紹介していきます。
Prototype Labs(2017年春)
時は遡り2017年春、当時同じチームだったiOSエンジニアがReact Nativeをアプリのプロトタイピングに使えないか調査していました。当時、彼が書いた社内ブログにはこのように書いてありました。
年末年始でReactNativeの調査をしていました。
目的はReactとcssの知見でネイティブのアプリが作れれば、アプリのプロトタイプできる人口を増やせるのでは?というところ。
xxx(とあるプロジェクト)の初期でいくつかの機能を試していたときに、「アプリに組み込んで手触りを試したい」という欲求があったものの ネイティブがかける人は少ないし、ネイティブでレイアウトを変えるトライアンドエラーはどうしてもコストが高いので 何か別の手段で試せた方が良いのでは・・?と考えたのがきっかけです。
この彼の取り組みを横目でみながら、「React Nativeというものがあって」「アプリのプロトタイピングに使えるかもしれない」という情報を得た僕は、自分でもちょっと試しに触ってみることにしました。
当時、どういうふうに試し始めたのかははっきりとは覚えていないのですが、「アイテムのリスト画面」と「アイテムの詳細画面」という基本の画面を作ったと思います。そして色々触ってみた結果「開発スピードをあげるために、完成度・機能・UI・パフォーマンスなどの制約を受け入れることができる」というものに向いていることがわかりました。そう、まさにプロトタイピングに向いていると思ったのです。*1
さらに、React Nativeを使ったプロトタイピングなら、これまで静的なプロトタイピング(ペーパーモック、InVisionなど)では諦めるしかなかった点もカバーできると思いました。
- 日常生活で使うことができるプロトタイプ
- 実際のデータを使ったプロトタイプ
- データを書き込むことができるプロトタイプ
というわけで、僕の中の「React Nativeでプロトタイピング環境を作りたい」という欲求がむくむくと湧き上がっていきました。なので鉄は熱いうちに打ての精神で、React Nativeを使った社内用のプロトタイピング環境「Prototype Labs」を作りました*2。
Prototype Labsの中身はというと、React Nativeを社内のプロトタイピングに特化させるために、薄いラッパーと幾つかの便利機能を追加したものです。具体的には、ファイルの配置ルール、デプロイの仕組み、ドキュメントの構築、認証周りのデフォルト実装、サーバサイドのAPIを簡単に呼び出せる仕組み、よく使うカラー・レイアウトの提供、etcという感じです。
Prototype Labsとは | APIリファレンス |
---|---|
ドキュメントはESDocというJavaScript向けのドキュメンテーションツールで作りました
特にドキュメント周りは力を入れて整備しました。というのも、社内のデザイナー(HTML, CSS, JSに多少触れたことがある人)にも使ってもらえるようにというのを目標の1つにしていたからです。実際、デザイナーとペアプロ的にPrototype Labsを触ってもらい、簡単な画面を作ってもらったりもしました。
そして、Prototype Labsを使って「料理まとめ(自分が投稿したレシピを自由にまとめられるもの)」という機能のプロトタイピングをデザイナーと一緒に行いました。結果、実際に日常使いをしながら議論をすることができ、主要な要件を決めるのに非常に役立ちました。料理まとめはその後、iOS版のクックパッドアプリに実装され、現在、本番環境で元気に動いています。この時一緒にプロトタイピングをしたデザイナーが当時の様子を「React Nativeで作る 「触れるプロトタイプ」の活用」というタイトルで発表しているので興味がある方は見てみてください。
裏クックパッドアプリ(2017冬)
Prototype Labsを作った後、しばらく業務ではReact Nativeを触ることはありませんでした。
一方で、プライベートでは自分の料理レシピをクックパッドに投稿しはじめました。これまでもレシピはGoogle Docsやブログなどに書き散らかしていたのですが、それらをせっかくなのでクックパッドに集約しようと思い、どんどんレシピを投稿していきました。そうするとレシピ投稿者の視点でクックパッドアプリを見るようになり、「今までレシピ投稿者向けの開発はしたことがなかったけど、来年(2018年)はレシピ投稿者向けの開発をしたいな」と思うようになりました。
で、それなら「レシピ投稿者(自分)が使いたくなるクックパッドアプリ」を作ってしまえば良いんだと思い立ちました。またしても鉄は熱いうちに打ての精神で、React Nativeを使ってオリジナルのクックパッドアプリをまるっと作り変えてしまおうと開発にとりかかりました。これが後にMYキッチンアプリの土台となるもので、社内の一部からは「裏クックパッドアプリ」「RNクックパッドアプリ」などと呼ばれることになります。
上述したとおり、裏クックパッドアプリはレシピ投稿者が使いたくなるというのを目指していたので、コンセプトや体験はオリジナルのクックパッドアプリとは大きく異なります。具体的には・・・という話をしたいのですが、ここに書くのは長くなりそうなのと企業秘密というわけで詳細は伏せておきます。この話を聞いてみたい!という方がいらっしゃれば、TwitterのDMなどから是非とも僕までコンタクトしていただければと思います。
モード切替 | キッチンモード | さがすモード |
---|---|---|
特徴は左下のクックパッドアイコン/ユーザアイコンからモードを切り替えるという点です
その他に気をつけたこととしては、オリジナルのクックパッドアプリにある機能はほぼ全て使えるようにするという点です。何故かと言うと、僕は普段使いのアプリをオリジナルから裏クックパッドアプリに完全に移行したいという考えがあったからです。そうしないと、結局オリジナルのアプリを使ってしまい、裏クックパッドアプリが中途半端なものになりうまく改善できなくなってしまうと危惧したからです。
そんなこんなで、コンセプトや体験の見直しをして、それを実現させる機能を実装し、さらに既存の主要な機能の実装を完了させ、僕は裏クックパッドアプリに完全に移行することができました。開発に取り組み始めてから2ヶ月ほどかかりましたが、実際に使った時間は10日間ほどでした。しかもこの期間でAndroidとiOSの両方を作ることができたのもReact Nativeの強みだと思います。裏クックパッドアプリを社内にリリースした時のブログに同僚が以下のようにコメントしてくれました。
10日間でここまで作り上げられるのはプロトタイピングにすごいインパクトがあることだと思いました。
この速さなら自分が鍵だと思ってるコンセプトを形にして提案することで、細かい調整(人的リソース、仕様共に)に時間を取られずに本質的な議論を始めやすくなるように思います。
プロダクト開発って結構一部を変えようと思っても全体を整えていかないといけない(けど時間がないからスコープを絞って細部の変更に留まってしまう)ということがありがちだと思うのでアプリ全体を素早く作り変えて試せるのは大きな価値だと思います。
クックパッド MYキッチン(2018年春)
そして、自分で毎日裏クックパッドアプリを使ってみて、この新しいアプリに未来を感じました。なので、2018年は裏クックパッドアプリを使ってレシピ投稿者向けの改善に取り組んでいくことを決めました。
そこから裏クックパッドを「クックパッド MYキッチン」に改名し、デプロイの仕組みやコードの整理、足りていない機能の追加やデザインの修正、アイコンの作成などを経て、2018年3月にAndroid/iOSともにプロダクションにリリースすることができました。
というわけで、続く3日間ではプロダクションリリースするために取り組んだ技術的な話、アプリアイコンの話、そして最終日はユーザの課題と解決策をどのように探っているかの話を各メンバーが紹介してくれます。お楽しみに!(ちなみに明日からの記事は今回のようなストーリー仕立てではなく、いつもの雰囲気に戻ると思うのでご安心ください)
自己紹介
最後になりましたが、簡単に自己紹介をさせていただきます。
僕は2014年にクックパッドに入社しWebやAndroid周りの機能実装を担当していました。その後に幾つかの機能のPMを担当して、今年から投稿開発部のマネージャー(部長)という役割を担っています。
プライベートではESDoc(JavaScriptのドキュメンテーションジェネレーター)やJasper(GitHub向けのIssueリーダー)というソフトウェアを開発しています。あと、CodeLunch.fmというポッドキャストをやっていたりもします。
僕個人に関してもっと詳しい話はForkwell Pressのインタビュー記事でお話させてもらっているので、興味のある方はご覧ください。
この連載を通して「仮説を素早くプロトタイプにしていく開発」や「React Nativeを使った開発」などに興味を持たれた方がいらっしゃれば、丸山(TwitterのDM)までお気軽にご連絡ください!もちろん、採用ページから応募していただくのも大歓迎です😊
最後に、この記事を読んだ印象を簡単なアンケートでご回答いただけるとうれしいです!