新規サービス開発部の出口 (@dex1t) です。普段はデザインからアプリ開発まで、新規サービス立ち上げに必要なことを浅く広くやっています。
さて、R&Dインターンや技術インターンに続きまして、9月10日~14日にかけてデザイナーとサービス開発エンジニア向けのプロダクトインターンシップを開催しました。私は本インターンの全体設計と講師を担当しました。この記事ではその内容を簡単にご紹介します。
このインターンはざっくりいうと、デザイナー・エンジニアでペアを組み、ゼロから"使える"サービスを作るという内容です。なかなかハードですね 😉
今年は「一人暮らししている人の料理が楽しみになるサービス」というテーマで、5日間のサービス開発を実践していただきました!
Day 1-2. 基礎編 ✍🏻
1日目から2日目午前は、「サービス開発を実践するための道具を提供する」という建て付けで、講義やミニワークを行いました。
ざっくり以下のような内容で、体験やコンテキストといったサービスデザインに関する抽象的な話から、サービス開発における具体的な手法・ツールまで駆け足で網羅しました。
- サービスとは?体験とは?
- サービス開発におけるマインドセットとプロセス
- ユーザー理解
- ワーク: ユーザーインタビューの実践
- アイデア発想と言語化
- ワーク: 価値仮説とストーリー作成
- 試作とテスト
- ワーク: ペーパープロトタイピング、アクティングアウト
サービス開発に初挑戦の方も多くいたこともあり、調査・発想・試作・試行の各ステップをなるべく丁寧に説明しました。実際の講義資料 (公開可能分のみ) はこちらです。
Day 2-5. 実践編 💪
2日目の午後からはいよいよテーマに沿って実践編のスタートです。
参加者の方にはテーマだけをお渡しし、具体的にどんなサービスを作るのか、言い換えるとどんな問いを立てるのか、その解き方も含めて、全てチーム毎に自ら考えて実行してもらいました。各チームには現場のデザイナーが専属メンターとして付き、全力でチームをサポートします。
序盤
肌感覚をつかむための最初の一歩として、インタビューを各チーム自発的に行っていました。参加者同士でのインタビューはもちろん、その場にいる社員を捕まえたり、電話インタビューしたりと、限られた時間のなかでインプットを増やすために各チーム工夫して動いていました。
中盤
インタビューを繰り返し、課題が見えはじめたところで、次はコンセプトの設計です。メンターに企画案を壁当てしながら、各チーム頭を悩ませていました。コンセプト設計には、価値仮説シートやストーリーシートなど、初日に講義の中で紹介した道具を活用してもらいました。
三日目の午後は中間発表です。ここでは企画案とその動作モックを使って、アクティングアウト形式での発表を必須としました。アクティングアウトは体験のプロトタイピングとも呼ばれる手法で、寸劇形式でサービスの利用体験を表現することで、そのリアリティの有無を確かめることができます。
この中間発表の様子は、動画撮影をして発表者自身にも確認してもらいます。こうすることで、この時点での企画案を客観視することができ、自らの判断で軌道修正するチームも見られました。
また講評者の観点では、テキストベースの企画書を読み込むよりも寸劇形式のほうが理解しやすく、より本質的なフィードバックに集中できるという利点もあります。
終盤
終盤はいよいよ実装です。残り少ない時間の中で、実装すべきところはどこなのか、どこを捨てるのか判断するのはサービス開発エンジニアの腕の見せ所です。弊社オフィスのキッチンで、自分たちのプロトタイプを試しに使いつつ料理するチームも出てきました。
最終発表
5日目の夕方には最終発表として、成果物のデモを中心に発表してもらいました!タイトなスケジュールのなかで、全チーム何らかの形で試すことができるサービスが出来上がっていて素晴らしかったです。
最終発表では、弊社CTOやデザイナー統括マネージャーを含む5名が審査員となり、優秀賞1チームを選ばせていただきました。
優勝チームは「その場限りのコミュニティでの料理通話体験」というコンセプトで、通話をしながら料理が楽しめるアプリの提案でした。デザインの観点では「料理経験が浅く失敗が多い」「1人で作って1人で食べるのが孤独」というマイナスをただ埋めるだけでなく、「失敗やハプニングも含めてみんなで楽しもう」という考え方でプラスに転換している点を評価しました。また、赤の他人との料理通話をどうアイスブレイクするかといった細かい配慮が、UIとしても表現できており素晴らしかったです。エンジニアリングの観点では、時間が無い中で「通話しながら料理する」という多くの人にとって未知な体験を、実際にその場で試せるクオリティで仕上げた点を高く評価しました!
最後は懇親会で終了しました!チェキコーナーも人気 ✌️
ということで、5日間でゼロからサービス作りをするというハードな内容でしたが、皆さんやり切っていただけました👏👏👏
プロダクトインターンシップで伝えたかったこと
ここからは裏話として、インターンの設計面についてです。今回5日間に渡って講義や実践を行いましたが、伝えたいことは大きく3つありました。
リアリティのある仮説をもつ
サービス開発は正解がなく、「やってみないと分からない」が大前提なのですが、無闇にやればいいという訳でもなく、仮説の質を上げるのが大事なポイントです。
良い仮説 (企画) とは何なのか。非常に難しい問題で私も分かりませんが、そのひとつにリアリティがあること、企画を聞いただけでサービスを使う情景がありありと目に浮かぶことは必要条件であると私は思います。(十分条件ではない😑)
講師側としては、問いの立て方をインターンシップで教えることは難しく、1day形式など特に時間が限られるワークショップでは、問いが立てやすいように仕立てた材料を、ペルソナのような形で渡しています。
ただし現場のサービス開発では、ペルソナが上から降ってくることはあり得ません。自分たちで情報を取りに行き、肌感を掴むことが求められます。
そのやり方も現場では人それぞれ様々ですが、今回は最も汎用的なツールとして、ユーザーインタビューを実践してもらいました。各チーム自ら工夫して情報を取りに行き、自分たちで見聞きした一次情報を元にしているからこそ、リアリティのある仮説が立てられることを体感してもらえたかな、と思います。
とりあえずやってみる
今回講義の冒頭では、次のようなインターン中に求める姿勢を明文化しました。過去に開催したこの手のワークショップでの反省も踏まえてなのですが、コンセプトワークだけでなく実際のモノに落とし込む部分を強く求めました。
この3つは、デザインファーム IDEOのValuesから表現を一部借りています。余談ですが、このValuesは新規サービス開発をやってる人間としてすごく共感できます。
やってみないと分からない状況下では、長々と議論やブレストをしても非効率になり得ます。荒削りでも良いので一度形にしてみると、正解でなくても、その形が間違っていることは最低限分かります。そうして徐々にボケた輪郭をシャープに描いていく姿勢は大切です。
試作と試行を繰り返す
また形にするのは一度限りではありません。それを壊してまた作ってを繰り返すのがサービス開発の基本姿勢です。今回最終発表で評価が高かったチームはいずれも、プロトタイプを何らかの形で自分たちで試してみたチームでした。今回優秀賞となったチームは、初対面の社員を捕まえて実際に電話しながら料理したり、帰宅後もお互いに通話しながら料理したりと、試行錯誤を繰り返しつつサービスを形づくるプロセスも素晴らしかったです。
5日間という現場以上にハードなスケジュールなこともあり、繰り返しができても1, 2回だったことは講師としての反省点でした。またインターンの制約上、テストする対象が自分たちや社員止まりでしたが、本来は実際の想定ユーザーにテストできるとベストです。これらの点は来年のインターンシップでは改善できればと思っています。
まとめ
今回のサマーインターンシップでは、講師により仕立てられたサービス開発ではなく、より実践的なリアリティのあるサービス開発を体感していただけたかな、と思います。参加していただいた皆さま、本当にありがとうございました!!
また、このようなサービス開発は現場でももちろん実践しています。新卒・中途問わず、ご興味あるかたは各ポジションにご応募いただくか、@dex1t までお声がけください 🙌