ディレクションの役割を持つスタッフの活躍を広げる取り組みについて

クックパッド検索・編成部の五十嵐啓人です。本業はレシピなどの料理検索を中心とした、主に「さがすユーザー」のサービス責任と、ユーザー数の拡大に責任を負っています。本日は部門を超えて取り組んでいる、ディレクションの役割を持つスタッフの活躍を広げるための取り組みについて紹介します。

ディレクションの役割を取り巻く当社の状況

日本のインターネットサービス界隈で「プロダクトマネージャ」の話題が盛り上がりを見せつつありますが、当社でもプロダクト開発を牽引・補佐する役割を担当しているスタッフを(名前の議論はありますが)慣習的に「ディレクター」と分類しています。

当社では、以前からエンジニアリングで活躍するスタッフについては、エンジニアマニフェストやエンジニア専用の評価制度作りなどに注力し、組織として期待するエンジニア像の言語化による職種の価値向上、およびキャリア支援を充実させてきました。しかし、エンジニアリング以外の役割については、個人それぞれ様々な活躍はありますが、成長は個人に依存し、組織として期待する像の言語化や、キャリアづくりの支援に踏み出せなかったのが実情です。

「上司のもっとも重要な仕事は、部下の履歴書を豊かにすること」という言葉は、当社代表の穐田が常々口にする言葉です。これを実現するためにも、今年度はじめからクックパッドという組織に必要とされる、ディレクションの役割を担うスタッフについて、社内の成功の類型化や言語化といったことへのチャレンジを始めています。これにより、当該スタッフがキャリアイメージをより具体化できるようにする他、当社のスタッフや会社にとって、何をやっている役割なのかを理解してもらい、今以上に必要な役割として認知されるようになりたいと考えています。

役割の言語化と要件作り

まず着手したのは、「ディレクションを担当するスタッフの会社での役割の言語化」と、「当社で活躍できるディレクターの要件づくり」です。「まず」とはいっても非常に難航したのですが、役割と要件について、社内の活躍事例を参考にしながら、大まかには下記のような項目を抽出しました。

ディレクション担当の会社での役割

サービスを通じユーザーに提供する価値と体験に責任を持ち、企画・進行・ものづくり・宣伝、必要に応じ収益化も含めあらゆる方法でサービスの価値を向上させることに責任を持つ

当社で活躍できるディレクターの主要な要件

今後も状況に応じ常にアップデートされるべきものですが、今期においては仮に以下のように要件を言語化をしました。

(ユーザー理解)サービス提供対象と、プレイヤーの理解

1.ユーザー理解

  • サービスを提供するユーザーの姿やイメージが具体的に描けており、だれよりもユーザーの課題に詳しくなっている

2.情報感度

  • 担当プロダクトの領域について、類似のサービスや業界動向・経済動向の最新情報を把握し、業務に活かすとともに、チームメンバーに展開できている

3.つながり

  • 同じ領域にチャレンジしている社外人材のネットワークを持ち、公開されている以上の情報を獲得し業務に反映できている

(協調)ビジョンの伝達とチームプレー

1. 周辺領域の知識

  • 一緒にプロダクトを作る仲間の業務知識をある程度越境して把握しており、お互いスムーズに業務が進められる

2. ゴールの言語化と具体化

  • プロダクトのゴールを言語化・図示化して、チームや社内メンバーに正しく理解し、巻き込むことができる。また現状解決すべき具体的な課題に落とし込める

(技術力)成功に導くためのテクニック

1. エンジニアリング以外の技術力

  • プロダクトを成功させるために必要な様々な高い技術力(プロジェクト管理、IA、ユーザー分析、アクセス分析、マーケティング、オペレーション等)を持ち、業務に適用できている

(推進力)プロダクトのハンドリング力

1. ハンドリング力

  • ハンドリングできるプロダクトの範囲が広がり、プロダクトそのものの価値変革や、改善が行える

2. 進行能力

  • スケジュールを切り、だらだらと考え続けるのではなく動くもので仮説検証をすすめ、プロダクト開発を前へすすめることができている

(共有) 経験のアウトプットと展開

1. 情報発信力とノウハウ化

  • 社内外でのMTGや講演やブログ等により、自社および自分の試したチャレンジに対する情報を発信し、周囲の行動に影響を及ぼしている。また、自らの成功事例を他人が実践可能なメソッドに落とし込めている

各項目については当社の事情や背景など様々な思惑があり、もっと丁寧にお話したいのですが、特に個人的にこだわったものとして、「技術の獲得」と「アウトプット」があります。

「技術」というとエンジニアが注目されがちですが、サービスを成功させユーザーの生活を変えるには、エンジニアリング以外にも分析、進行、ユーザーの欲求抽出など様々な高度な技術を磨き、適用することが不可欠です。この「技術」を磨くには、勉強によるインプットを継続的に行い、業務を通じ技術を利用し、自分の技術の改善をすることが必要になりますが、さらには特定の案件や業務でしか通用しないローカルナレッジだけでなく、他のスタッフが参照したくなる何がしかの「専門家」というポジションを獲得することで、さらに高い経験が積める高度な仕事を呼び寄せることが非常に重要だと考えています。

エンジニアリングでも、今でこそ当社は社外から一定の評価をいただいていますが、当社が小さい頃は、不得意なことでも突っ込んでいって、効率は悪いが時間を掛けてでもやりたいことを実現せざるをえませんでした(デザイナーが課金システムを作ったりといったことも、その最たる例でしょう)。ですが、現在当社のエンジニアリングでは、各領域の様々なプロフェッショナルが集った結果、何事を進めるにも、だいたい社内に専門家がおり、ものごとが非常にスピーディーにかつ、レベルの高い状態で進みます。さらに、その専門性ゆえ社外でも、自分の可能性を広げる様々な機会を獲得できています。

今回のディレクター指標の検討にあたっても、そのような横にあるエンジニアの事例を強く意識しながら、言語化をすすめました。

運用にあたって

実際の運用にあたっては、各「要件項目」に対し、点数評価を「自己診断」として行い、それを基に「少し先のキャリアについて上司と話す面談の材料」という形で、テスト導入を一部部門で行いました。人事評価と結合する方法も考えられましたが、特に経験の少ない若いスタッフが、キャリアパスをイメージできるようにして成長イメージを描けるようにすることが一番の目的ですので、「まずは小さくテストで評価をしてみよう」というプロダクト開発のようなノリです。

また、一般的にディレクターは職種として、企画職などといった立場で、独立した職種として扱われることも多いと思います。しかし当社では、伝統的にディレクションは特定の職種固有の専権ではないという考え方がありますので、今回は「職種」ではなく、「役割」という概念を取り入れて、例えば「エンジニアリング」や、「編集」などと「ディレクション」の役割を兼任し活躍するスタッフも、ひとつの理想像としてスタッフの多様な才能を評価できるようにしたいと考えています。

今後は、今回ご紹介した要件のブラッシュアップに加え、各要件項目として掲げたことを伸ばす機会づくりを拡大したいと考えています。いくつか小さな取り組みは動き始めていますが、そのひとつとして、今年の秋より、こちらの技術ブログをお借りしてディレクション系の役割を担う有志メンバーのブログポストを始めさせていただきました。これら様々な方法を通じ、各スタッフが社内外に向け自分の強みを発信し、専門性の確立に繋げたいと考えています。

※下記の項目について、ぜひ、取り組まれている同じ分野で気になる内容があれば、情報交換など弊社オフィスに遊びに来てください

ディレクション系の役割を中心に担うスタッフによる最近の当ブログ投稿

また、その他来年度からも様々な取り組みを増やしたいと考えていますので、機会があれば、こちらでご報告できれば良いなと思っています。

こんなディレクター達と一緒に働いてくれるエンジニアの方をお待ちしています。

本題から脱線しますが、当検索・編成部では、日本ひいては世界最高の料理のための検索エンジンを作り、それを生かしたプロダクト作りを進めています。ちょっとした改善が日本の家庭で食べられるものを豊かにできるとてもやりがいがあり、とても楽しい仕事です。

こんなディレクターの方々と一緒に、ユーザー価値について議論しながら、働いてくれる一エンジニアの方を絶賛募集中です。ぜひ、気軽にお話にいらしてください。